切削加工において、適切な工具の選定は重要なポイントです。今回は、スローアウェイチップに注目し、そのメリット・デメリットを解説するとともに、求められる性質、用いられる材質についてもお伝えしていきます。
スローアウェイチップとは
スローアウェイチップは、旋盤やフライス加工に用いられる工具で、刃先が交換できるのが特徴です。
ボディとチップが溶接されているタイプの工具は、切れ味が鈍るたびに刃先を研磨する必要がありますが、スローアウェイチップなら新しいチップに交換するだけで済みます。メンテナンスにかかる時間を短縮でき、作業の効率化と品質の安定化を図ることが可能です。
チップの形状や刃先角度は規格化されており、加工目的に応じて種類を容易に選択できます。
スローアウェイチップのメリット

スローアウェイチップのメリットとして挙げられるのは、以下の4点です。
再研磨が不要である
従来のバイト工具では、刃の切れ味を保つための定期的な研磨作業が求められましたが、スローアウェイチップの場合は、摩耗しても新品のチップに交換するだけで済みます。
研磨にかかる設備や作業時間が不要になり、工具管理を簡素化することが可能です。常に均一な品質の刃先を使用できるので加工精度のばらつきを抑えられ、生産効率の向上にもつながります。
簡単に交換できる
スローアウェイチップは、ホルダーに取り付けられた状態で簡単に交換できるよう設計されています。ネジやクランプを外して新しいチップを取り付けるだけですぐに作業を再開できるため、段取り替えの時間を大幅に短縮できます。
特に量産加工の現場では、工具交換による機械停止時間を減らせることが大きなメリットです。刃先位置の再調整が不要な設計であれば、作業者の負担軽減にもつながります。
形状が多様である
切削チップは、加工条件や被削材に応じて、さまざまな形状・刃先角度が用意されています。外径加工と溝入れのように適切な形状が異なる場合でも、目的に適したチップを選ぶことが可能です。
メーカーによってブレーカーの形状やコーティング技術も異なり、幅広い選択肢から探せるのもメリットです。同じホルダーでもチップを変えることで異なる加工ニーズに対応できるようになり、生産現場の汎用性が高まります。
切りくずの処理性能が高い
スローアウェイチップの多くは、刃先に「チップブレーカー」と呼ばれる、切りくず制御溝が設けられています。これにより切りくずが細かく折れ曲がり、絡まりや詰まりを防ぐことが可能です。
自動旋盤や連続加工では、切りくずの排出性が低いと、加工精度や品質に影響を及ぼしかねません。切りくずのつまりによって機械が停止すれば、除去作業や破損した工具の交換作業などが発生します。
優れた切りくず処理性能は、生産性の向上とトラブル削減の両立に大きく寄与してくれるでしょう。
スローアウェイチップの注意点

スローアウェイチップを導入する上では、以下のような点に注意しておくべきです。
高額なケースが多い
スローアウェイチップは高精度な焼結加工やコーティング技術を用いて製造されるため、従来のバイトに比べて初期コストが高くなる傾向があります。高性能コーティングチップや特殊形状のものは単価が高く、量産現場ではランニングコストもかさみがちです。
ホルダやクランプなど、専用の保持具が必要になる場合もあり、導入時にはある程度の初期投資を見込む必要があります。
重切削には向かない
スローアウェイチップは刃先を交換して使用するため、チップとホルダーの間に若干の隙間や構造上の制約が生じます。そのため、大きな切込み量や強い切削抵抗が発生する重切削では刃先の安定性を十分に確保できず、チッピングや振動が起きやすくなります。
特に高硬度材の荒加工などでは、切削条件を適切に設定しなければチップ寿命が短くなるほか、生産効率が低下する恐れがあります。
加工範囲に制限がある
スローアウェイチップは用途ごとに形状やサイズが分けられているため、1種類のチップで多様な加工を行うのは難しいという制約があります。
また、必ずしも既製品で対応できるとは限らず、特殊形状や複雑な加工にはオーダーメイドの工具が必要になることもあるでしょう。
スローアウェイチップに求められるもの

スローアウェイチップには、主に以下4つの性能が求められます。
硬度・粘り強さ
スローアウェイチップには、材料を正確に削るための高い硬度と、欠けや割れに耐える粘り強さの両立が求められます。硬度が高いほど切削時の摩耗を抑えられますが、同時に脆くなる傾向があるため、素材や製造方法の工夫が重要です。
断続切削や被削材に硬化層がある場合は特に、刃先への衝撃が大きくなりやすいため、単に硬いだけでなく、欠けにくい粘り強さが欠かせません。
耐熱性
切削加工では、刃先と被削材が高速で接触するため、加工内容によっては1,000℃近い高温になることもあります。スローアウェイチップには、この過酷な環境下でも形状や硬度を維持できる耐熱性が求められます。
耐熱性が不足すると、刃先が軟化して摩耗や変形が進み、加工精度が低下しかねません。そのため、近年では耐熱コーティングが施されたチップが主流になっています。
化学的な安定性
刃先被削材が高温で接触すると、化学反応による溶着などが起こりやすくなります。これを防ぐためには、酸化や化学的変質に強い特性が必要です。
鉄系材料やステンレスを加工する際は特に、刃先が化学的に安定していないと、材料の付着によって切れ味が低下したり、刃先の寿命を縮めたりしかねません。
工具素材やコーティングに変質が起こりにくい材質を用いることで、チップ表面の反応を抑え、安定した切削と美しい仕上げ面を維持できます。
耐摩耗性
長時間の加工で刃先が摩耗すると、寸法精度が崩れたり、表面粗さが悪化したりします。耐摩耗性を高めるためには、硬質な基材と高性能コーティングの組み合わせが欠かせません。
粘りのある材料には摩擦係数の低いコーティングを選ぶなど、加工条件にあわせた選定が重要です。
主に使用される材質

ここでは、スローアウェイチップに使われる主な材質について解説します。
超硬合金
主成分のタングステンカーバイドに、コバルトなどをあわせて製造します。高い硬度と粘り強さを両立し、幅広い材料の切削に対応できます。製造段階で粒径や配合比を調整することで、仕上げ加工向け、荒加工向けなど、用途別の性能チューニングも可能です。
サーメット
チタンカーバイドや窒化チタン、ニッケル、コバルトなどを焼結して作られます。超硬に比べると耐摩耗性が高く、仕上げ加工において優れた切削面が得られるのが特徴です。
被削材との化学反応が起きにくく、ステンレスや鋼の高速仕上げにも向いています。ただし、靭性がやや低いため、断続切削や衝撃の多い加工には不向きです。
セラミックス
セラミックスは酸化アルミニウムや窒化ケイ素を主成分とした非金属材料で、非常に高い硬度と耐熱性を持ちます。特に鋳鉄や耐熱合金の高速切削に適しており、高温下でも変質しにくいのが特徴です。
金属成分を含まないため化学的にも安定しており、溶着や摩耗の発生を抑制できます。その一方で衝撃に弱いため、断続切削や振れの大きな加工では注意が必要です。
ダイヤモンド
工具材質の中で最も高い硬度を誇り、摩耗に非常に強いのが特徴です。アルミニウム、銅、樹脂など、非鉄金属や複合材料の切削に適しています。
刃先が極めて鋭く保たれるため、光沢のある高精度な仕上げ面を実現できますが、鉄系材料では酸化によって刃先が劣化するため注意が必要です。
加工に応じた最適なスローアウェイチップを選択しよう
スローアウェイチップは、加工する材料や加工条件を踏まえ、被削材に合った形状・材質のものを選ぶ必要があります。
たとえば、鉄鋼には耐摩耗性の高い超硬合金、ステンレスには溶着しにくいサーメットやTiAlNコートが適しています。切削速度や送り量、冷却の有無もチップ寿命に直結するため、機械性能とのバランスを考慮して選ぶことが重要です。
本記事でご紹介したポイントを参考に、高精度な加工を実現できるスローアウェイチップを選んでみてください。
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この記事の執筆者
特殊切削工具メーカー比較サイト編集部
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