ドリル加工におけるさまざまな課題を解決する方法の1つとして、シンニングが挙げられます。シンニングはドリルの先端部に施す加工で、切削抵抗の抑制や切りくずの排出性向上などに効果的です。
今回は、シンニングの概要を解説するとともに、シンニング加工のメリットをお伝えしていきます。ドリル加工で起きがちなトラブルと対処法もまとめているので、あわせてご覧ください。
ドリルのシンニングとは
ドリルのシンニングとは、ドリル先端部の中心(チゼルエッジ)を削り取って、切削抵抗を減らすための加工技術を指します。
通常のドリルは、先端の中心部分に切れ刃がありません。そのため、材料に食い込む際に押しつける力が大きくなり、摩擦や熱が発生して精度が低下します。
シンニングを施すことで中心部が鋭利になり、切削点を形成することができるため、穴あけ時のスラスト抵抗を大幅に低減することが可能です。
シンニングの種類

シンニングにはさまざまな種類があり、加工内容に応じて選ぶ必要があります。ここでは、形状ごとの特徴を解説していきます。
X型
X型シンニングは、ドリルの先端を左右対称に交差させるように加工した形状で、最も一般的に用いられるタイプです。チゼルエッジがX字状に短くなるため、中心部の切削抵抗が減少し、穴あけ開始時の食いつきがスムーズになります。
R型
R型シンニングは、チゼルエッジ部を緩やかな曲線(R形状)で削り取る方式です。刃先の中心部が丸みを帯びているので、切削時の抵抗を自然に分散し、加工中の振動やバリ発生を抑えられます。
直進性や芯ブレにやや注意が必要なため、高精度な穴あけよりも滑らかな切れ味を重視する用途に向いています。
S型
S型シンニングは、ドリル先端の中心をS字状に加工するので、切削時のスムーズな切りくず排出を実現します。チゼルエッジが左右非対称気味に仕上がるので、切削抵抗の偏りや穴あけ中のブレを抑えることができます。
N型
N型シンニングは、ドリルの標準的な先端角を保ちながら、最小限のシンニングを施したタイプです。加工形状が比較的単純で、刃先剛性を保ちつつ、チゼルエッジの抵抗を適度に軽減する設計となっています。
XR型
XR型シンニングは、X型とR型の特長を組み合わせた複合形状です。チゼルエッジを「X状」に短くしつつ、その先端をわずかに「曲線(R)」に仕上げることで、直進性と食いつき性の両立を実現しています。
硬質金属から軟質材まで幅広く対応でき、加工時のビビリや摩耗を抑制しながら安定した切削を維持してくれます。
シンニング加工のメリット

ドリルにシンニングを施すことで得られるメリットは以下の通りです。
切削抵抗が減る
シンニング加工を行うことで、ドリル先端部にかかる切削抵抗を大きく低減できます。
通常、チゼルエッジ(ドリルの中心部)には、実際に切削を行う刃が付いていません。そのため、ある程度素材を押しつぶすようにして穴を形成するために大きなスラスト力が必要になります。
シンニングによってチゼルエッジを削り取り、先端を鋭利にすると、押しつける力が軽減され、滑らかに切り込めるようになります。硬質材や深穴加工では、この効果が特に顕著に現れるでしょう。
工作機械の負担が軽くなってより安定した切削が可能になるほか、エネルギー効率や作業効率の向上にもつながります。
切りくずの排出性能が上がる
シンニングによってドリル先端の形状が整えられると、切りくず(チップ)の流れがスムーズになります。
例えば穴加工では、チゼルエッジに余計な金属が残っていると、切りくずが詰まりやすく、焼き付きや刃の欠損を引き起こしかねません。シンニングを施すことで、中心から外周に向かって切りくずが自然に流れ出す経路が形成されるので、排出効率が大幅に向上します。
この効果は、とくに深穴や粘りのある材料を加工する際に有効で、加工穴の詰まりを防ぎ、仕上げ面の品質も向上させます。切りくずが滑らかに排出されることで冷却液の循環が良くなり、熱変形や摩耗を抑制する副次的効果も得られます。
工具寿命が延びる
シンニング加工を施したドリルは、切削抵抗の減少と熱発生の抑制により、全体的な摩耗が少なくなるのが特徴です。ドリルの先端中心部は最も負荷が集中する箇所ですが、シンニングによってその圧力が分散されます。
すると刃先の欠けや摩耗の進行を抑えることができ、ドリル全体の寿命が大幅に延びます。切りくずの詰まりや焼き付きによる過剰な熱負荷も防げるので、チッピングや折損のリスクが低下するのもメリットです。
生産性の向上やコスト削減にも寄与するため、大量生産の現場では特に重宝されます。
ドリル加工で起きがちなトラブルと対策

ここでは、ドリル加工で起きがちなトラブルについて解説していきます。シンニングで発生を抑えられるケースもあるので、対策方法の1つとして確認しておきましょう。
チッピングや折損
ドリル加工において、チッピングや折損は最も頻繁に発生するトラブルの1つです。これらの主な原因としては、次のようなものが挙げられます。
- 過大な切削抵抗
- 不適正な送り速度
- 溶着 など
硬質材料の切削や断続的な切削では、特に刃先に衝撃が集中しやすく、微小な欠けから全体の折損につながることもあります。工具の破損を防ぐためには、切削条件を適性に設定するほか、シンニングを施して切削抵抗を減らすなどの工夫が求められます。
穴の曲がり・広がり
ドリルで穴をあける際には、穴の曲がりや径の広がりが発生することがあります。原因としては、主に以下の点が挙げられます。
- ドリルの芯ブレ
- シンニング不良
- 被削材の硬度ムラ
- クランプ不良 など
また、チゼルエッジが左右非対称だと、切削力が偏り、ドリルが一方向に押されて真っすぐ進まなくなります。
こうした問題に対しては、正確な芯出し、シンニング形状の適正化、センタードリルの活用などが効果的です。
異常摩耗
ドリルの異常摩耗は、工具寿命を大きく縮める原因になるため注意が必要です。摩耗速度が異常だと、次のような症状が現れます。
- 短時間で刃先が丸まる
- 欠ける
- 変色する など
異常摩耗の原因は、過度な切削速度、冷却不足、被削材の硬度過大、熱蓄積などさまざまです。異常が見られる場合には、切削条件を見直し、クーラントやコーティングドリルの使用、シンニングによる切削抵抗の軽減を検討しましょう。
このほか、定期的にドリルの状態を確認し、摩耗の早期発見、適切なタイミングでのメンテナンスを行うことが大切です。
加工面が荒れる
ドリルの加工面が荒れると、仕上げ品質の低下や後工程でのトラブルにつながります。この原因としては、主に以下の点が挙げられます。
- ドリルの摩耗や欠け
- 切りくずの噛み込み
- 振動(ビビリ)など
刃先が摩耗していると切れ味が鈍くなり、素材を押し潰すように加工するため、表面がざらつきやすくなります。対策としては、ドリルの刃先を常に良好な状態に保つことが一番です。
切削油を適切に使用して熱を逃がすほか、切りくずを確実に排出することでも面粗度を改善できます。さらにシンニング加工を施すと切削が安定し、平滑な仕上げ面を実現しやすくなります。
ドリルのシンニングで工具寿命を延ばす
ドリルの先端には切刃が付いておらず、被削材によっては食いつきが甘くなることがあります。そうなると、刃先の破損や穴径精度の低下、仕上げ面の乱れにつながるため、対策を講じなければなりません。
チゼルエッジを削り取るシンニング加工は、切削抵抗を抑える効果があり、ドリルにかかる過度な負荷を減らせます。切りくずの排出性も高まるため、詰まりや熱の蓄積による劣化も防げます。
お伝えしたように、シンニングにはさまざまな種類の加工があるため、被削材や加工内容に応じて適切なものを選びましょう。
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この記事の執筆者
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