ドリルの先端角とは?使い分けと加工不良の対策方法を解説

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ドリル加工の精度や仕上がりは、工具の状態や切削条件だけでなく、ドリルの先端角にも影響されます。先端角には用途に応じてさまざまな種類があり、食いつきの良さや穴位置の安定性などがそれぞれ異なります。

精密な加工には、適切な先端角のドリルを使い分けることが欠かせません。そこでこのコラムでは、先端角の基本的な役割と使い分けについて解説しています。ドリル加工で起きがちなトラブルとその対策もまとめているので、あわせてご覧ください。

もくじ

  1. ドリルの先端角とは
  2. 先端角の使い分け
  3. ドリル先端部に関わる部位や加工の名称
  4. ドリルの切削条件
  5. ドリルの加工不良と対策
  6. ドリルの先端角は加工によって使い分けよう

ドリルの先端角とは

ドリルの先端角とは、ドリルビットの先端に形成されるV字部分の角度のことです。ドリルの左右の切れ刃が交わる部分にできる角度で、穴あけのスピードや仕上がりの滑らかさ、材料への負荷などに影響を与えます

先端角が大きいと切りくずが排出されやすいため、工具寿命や加工精度が向上します。しかし、加工内容によっては必ずしも大きい先端角が適しているとは限らないため、用途に応じて使い分けなければなりません。

先端角の使い分け

ドリルの先端角は、穴を開ける素材の硬さや粘り、厚みなどによって最適な角度が異なります。主に以下のような角度がありますが、一般的な超硬工具の先端角は主に118°です。

  • 90°
  • 118°
  • 140°

118°のドリルは汎用性が高く、とくに木材や樹脂、アルミなどの比較的柔らかい素材に適しています。切れ味が鋭くスムーズに穿孔できるほか、バリが出にくいのが特徴です。

一方、140°のような大きな角度は、鉄やステンレスといった硬い金属に向いています。鈍角になることで刃先の強度が増し、切削時の負荷が分散されるため、刃欠けが起きにくいのが特徴です。

被削材に応じて適切な先端角のドリルを使い分けることが重要です

ドリル先端部に関わる部位や加工の名称

穴あけ加工では、先端角だけでなく、さまざまな部位の状況を考慮しなければなりません。ここでは、ドリル先端部に関わる部位や加工の名称とその概要を解説していきます。

チゼルエッジ

チゼルエッジとは、ドリル先端の中心部分にある「刃のない部分」のことです。

チゼルエッジは切れ刃ではなく、加工時にドリル中心部は切削速度が0になるため、チゼルエッジが大きいと切削抵抗が増えて食いつきが悪くなってしまいます。先端が逃げたりブレたりしやすくなって穴の位置精度が低下し、真円度といった穴の品質を左右する様々な要素に影響を及ぼしかねません。

高性能なドリルほど、チゼルエッジの形状や短縮技術が重要視されています。

シンニング

シンニングは、チゼルエッジ部分を研削して薄くする加工を指します。この加工の主な目的は、切削抵抗を減らし、ドリルの食いつきと穴あけ精度を高めることです。

さらに、先端中心部にチップポケット(切りくずの逃げ場)を設けられるため、中心部の切りくずを排出しやすくできるのも、シンニングのメリットの1つです。工具によっては、シンニング部で切りくずを分断できるタイプもあります。

なお、シンニングの形状には次のように様々な種類があるため、加工条件や被削材に応じて選択しましょう。

X型 最も一般的な形状。食い付き性が良好で、スラスト(軸方向)抵抗が小さい。
N型 チップポケットが大きく、切りくずの排出性が高い。
S型 再研磨が容易で、先端強度が高い。
R型 食い付き性・切りくず排出性が高く、重切削用ドリルに採用されることが多い。

すくい角とは、ドリルの切れ刃が素材を削り出す方向に対してどれだけ傾いているかを示す角度のことであり、刃物の切れ味を決める重要な要素です。

すくい角が大きいほど刃先は素材に食いつきやすく、軽い力で切りくずが排出されます。一般的に、木材や樹脂など柔らかい素材ではすくい角を大きくし、硬い素材には小さく設定します

逃げ角

逃げ角は、切れ刃の後ろ側に設けられた角度のことで、刃が加工面と必要以上に接触して摩擦が増えるのを防ぐ役割があります。刃先だけが素材に触れるようになるので、精度の高い穴加工を実現するために欠かせない要素です。

逃げ角が小さすぎると、摩擦のせいで熱が発生しやすくなり、摩耗や焼けつきの原因になります。逆に大きすぎると刃先の支持力が弱くなり、ビビりや欠けが起きやすくなるため、適度な角度設定が不可欠です。

ホーニング

ホーニングは、刃先のエッジ部分を微細に研磨することで、刃の耐久性を高める技法です。鋭い刃先は切れ味が良い反面、微小な欠けが発生しやすく、硬い素材を加工するとすぐに摩耗してしまいます。

ホーニングを行うと刃先の微細な凹凸が整えられ、刃が欠けるのを防ぎ、安定した切削が可能になります。とくに、ステンレスや鋼のような粘りのある素材では、ホーニングが大きな効果を発揮するでしょう。

ただし、刃先を丸める分、切れ味が落ちる傾向にある点には留意しなければなりません。ホーニングの要否や最適なホーニング量は加工条件や被削材によって異なるため、判断に迷う場合は工具メーカーに相談するのがおすすめです。

ドリルの切削条件

ドリル加工で目標の成果を達成するためには、適切な条件設定が欠かせません。とくに意識したいのは切削速度と送り速度で、これらは以下の計算式で算出します。

  • 切削速度:「V=π×D×N÷1000」ドリルの回転数(N)と工具径(D)から算出
  • 送り速度:「F(mm/min)=N×f」工具の回転数(N:rpm)と1回転あたりの送り量(f:mm/rev)から算出

切削条件は、基本的にカタログの値を参考にしますが、被削材、工具素材、冷却条件などによって変わるため、加工内容に合わせて設定しなければなりません。

ドリルの加工不良と対策

ドリル加工においては、次のようなトラブルが生じがちです。

  • 工具の破損
  • 異常摩耗
  • 穴径不良
  • 仕上げ面不良

それぞれの原因と特徴、対策を確認し、トラブルを未然に防ぎましょう。

工具の折損

工具の折損は、多くの場合、過大な切削抵抗やドリルへの偏った負荷が原因で発生します。とくに細径ドリルは抵抗に弱くなりがちで、小さな食い込みや芯ブレでも破損につながりやすいです。

また、切りくずの排出性能が低いために摩擦が生じ、欠けや折損につながることも少なくありません。折損を防ぐための策としては、適正な切削条件の設定のほか、切削油の十分な供給などが挙げられます。

摩耗したドリルを使い続けると折損リスクが高まるため、早めに交換や再研磨を実施することも重要です。

異常摩耗

異常摩耗は、通常よりも早い速度でドリルの刃先が摩耗する現象で、過大な加工熱の発生や切削条件の不適合が主な原因となります。切削速度が高すぎたり、切りくずがうまく排出されなかったりすると、刃先が過熱して摩耗が一気に進行します

対策としては、切削条件の最適化やクーラントの使用が挙げられるほか、コーティングドリルの活用も効果的です。摩耗を放置すると仕上げ面が悪化し、折損にもつながるため、工具の状態を定期的に観察し、早期のメンテナンス・交換の判断が必要です。

穴径不良

穴径不良は、想定のサイズよりも穴が広がったり狭まったりするトラブルで、その原因は多岐にわたります。摩耗による刃先形状の変化、機械やチャックの振れ、過大な切削抵抗によるブレなどが典型的な原因です。

穴径トラブルが起こる場合は、切削条件を見直すほか、突き出し量を調節すると良いでしょう。ザグリ加工やセンタードリルでガイド穴を作ることで、ドリルの進入を安定させ、穴径のばらつきを抑えることも可能です。

仕上げ面不良

仕上げ面不良の原因は、多くの場合、刃先の摩耗や切削熱による業着、切りくずの噛み込みによる振動などです。切削油が不足している場合も、仕上げ品質は著しく低下してしまいます。

改善策としては、摩耗した工具の交換、切削油の量と種類の見直し、加工速度の減速が有効です。真円度が要求される場合は、ドリルのあとにリーマ加工を追加することで、高品質な仕上げ面を得られます。

ドリルの先端角は加工によって使い分けよう

ドリルの先端角は118°が一般的ですが、加工内容によって90°、140°などを使い分けて加工します。先端角が大きい方が、刃に負担がかかりにくく、工具寿命の延長、加工精度の向上に有効です。

しかし、どの加工に対しても大きい角度がよいというわけではないため、加工内容に応じて選定することが大切です。被削材や工具素材、ドリル先端部のさまざまな形状などを総合的に判断し、その加工に適したドリルを使い分けましょう。

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この記事の執筆者

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