超硬とハイスはどちらも切削工具に使われる代表的な材質ですが、硬さ、耐摩耗性、靱性、切削速度への適性が異なります。そのため、同じ感覚で選ぶと加工トラブルにつながることがあります。
本記事では、超硬とハイスの違い、向いている加工条件、超硬の代替としてハイスを使用する際のポイントを解説します。
もくじ
超硬とハイスの違い

超硬とハイスは、どちらも切削工具に使われる代表的な材質です。しかし、材料の成り立ちや得意な加工条件は大きく異なります。
- 材質
- 硬さ・耐摩耗性・靱性
- 切削速度・加工精度
材質
超硬は、タングステンカーバイドを主成分とし、コバルトなどの金属を結合材として焼結した材料です。一般的な超硬合金は、硬質の炭化物と金属結合材で構成されており、切削工具や金型、耐摩耗部品などに使われます。
一方ハイスは、高速度工具鋼とも呼ばれる合金鋼です。鉄をベースに、タングステン、モリブデン、クロム、バナジウム、コバルトなどの合金元素を加えて作られます。日本国内では、ハイスはJIS G 4403で規定される高速度工具鋼に分類されます。
つまり、超硬は「炭化物を焼き固めた硬質材料」であり、ハイスは「鉄をベースにした高合金工具鋼」です。
硬さ・耐摩耗性・靱性
超硬は、ハイスよりも硬さと耐摩耗性に優れます。タングステンカーバイドを主体とするため、刃先が摩耗しにくく、長時間の加工でも寸法や面品位を安定させやすい材質です。
特に、連続加工や量産加工のように工具へ長時間負荷がかかる工程では、耐摩耗性の高さが大きなメリットになります。
しかし、硬い材料ほど衝撃には弱くなりやすく、欠けや割れへの配慮が必要です。断続切削やビビリが発生しやすい加工では、刃先に瞬間的な負荷がかかるため、超硬の硬さが必ずしもメリットとなるわけではありません。
ハイスは超硬ほどの硬さや耐摩耗性はありませんが、靱性に優れます。粘りがあるため、欠けにくく、折れにくい工具材質として使いやすいです。
ドリル、タップ、リーマのように刃先へねじりや曲げの力がかかりやすい工具においては、ハイスの靱性がメリットになるでしょう。
切削速度・加工精度
超硬は耐熱性と耐摩耗性が高いため、高速回転でも刃先が摩耗しにくく、量産加工や高能率加工に向いています。刃先の摩耗が進みにくいことで、寸法精度や面粗さも安定しやすいです。
一方で、ハイスは超硬に比べると高速加工には向きません。ハイスは一般的な工具鋼より高温下で硬さを保ちやすい材質ですが、超硬と同じ切削速度で使うことはできません。高温環境での硬さや耐摩耗性は超硬のほうが優れるため、高速加工においては超硬が適しています。
超硬が加工に向いているケース
超硬は、硬さ・耐摩耗性・耐熱性に優れた工具材質です。そのため、加工スピードや寸法安定性を重視する工程では、ハイスよりも超硬が適している場合があります。具体的には以下のようなケースが挙げられます。
- 高速加工でサイクルタイムを短縮したい
- 長時間の連続加工で工具寿命を安定させたい
- 高精度な寸法やきれいな仕上げ面が求められる
- 硬い材料や難削材を加工する
しかし、超硬は硬い反面、衝撃やビビリによって欠けるリスクがあります。断続切削が多い工程や、機械剛性が不足している状況においては、必ずしも超硬が最適とは限りません。
加工条件、設備剛性、被削材、求める精度を確認した上で、ハイスとの使い分けを判断する必要があります。
ハイスが加工に向いているケース
ハイスは超硬に比べると硬さや耐摩耗性では劣りますが、粘り強く、欠けや折れに強い工具材質です。そのため、以下のような加工条件が安定しにくい場面や、工具に衝撃・ねじれ・曲げの力がかかりやすい工程では、ハイスが適している場合があります。
- 断続切削や衝撃がかかる加工を行う
- 機械剛性や保持剛性に不安がある
- 試作や小ロット加工で工具費を抑えたい
- タップ・リーマ・総形工具など粘りが必要な工具を使う
高速加工や長時間の量産加工において、ハイスは超硬に比べて不利になりやすいです。しかし、衝撃への強さ、扱いやすさ、初期コストの低さを重視する工程では、ハイスが適しているケースもあります。
超硬の代わりとして考える場合も、すべてを置き換えるのではなく、加工数量や設備条件、工具にかかる負荷を確認しながら部分的に採用することが大切です。
超硬の代替としてハイスを使用する際のポイント

超硬の価格上昇や納期の不安定化を背景に、ハイスへの切り替えを検討するケースは増えています。しかし、超硬とハイスは特性が異なるため、単純に同じ条件で置き換えることはできません。超硬の代替としてハイスを使用する際のポイントとして、以下が挙げられます。
- 切削条件をハイスに合わせて見直す
- 加工精度と仕上がりへの影響を確認する
- 再研磨や再製作のしやすさも確認する
切削条件をハイスに合わせて見直す
超硬からハイスへ変更する場合、切削条件の見直しは欠かせません。超硬で設定していた回転数や送りのままハイスを使用すると、刃先温度が上がりすぎたり、摩耗が早く進んだりする可能性があります。
ハイスは超硬ほど高速加工に強くないため、回転数や切削速度を抑えて使用する必要があります。また、工具への負荷が大きい場合は、送り量や切込み量も調整し、刃先に過度な負担がかからない条件にすることが大切です。
切削条件を下げると、加工時間は長くなる場合があります。そのため、ハイス化によって工具費を抑えられても、加工時間の増加によってトータルコストが悪化しないかを確認する必要があります。
単純な工具単価の比較ではなく、1個あたりの加工時間や交換頻度まで含めて判断することが重要です。
加工精度と仕上がりへの影響を確認する
ハイスを代替材として使う場合は、加工精度や仕上がりへの影響も確認しておく必要があります。ハイスは超硬に比べて剛性や耐摩耗性の面で不利になりやすいため、加工条件によっては寸法のばらつきや面粗さの変化が起こることがあります。
特に、長時間の連続加工では工具摩耗が進むことで、加工寸法が変化しやすくなります。また、細径工具や突き出しの長い工具では、工具のたわみによって精度に影響が出る場合があります。ハイスへ切り替える前には、実際の加工品で寸法、面粗さ、バリの発生、工具摩耗の進み方を確認することが大切です。
再研磨や再製作のしやすさも確認する
ハイスは、超硬に比べて工具寿命が短い傾向にあります。しかし、代替可否を判断する際は、単純な寿命だけでなく、再研磨や再製作のしやすさも含めて考えることが重要です。
ハイス工具は、形状によっては再研磨しやすく、特殊工具や総形工具でも対応しやすい場合があります。使用頻度が限られる工具や、短納期で再製作したい工具では、ハイスの加工性のよさがメリットになります。
一方で、加工数量が多い工程では、再研磨の回数や工具交換の手間が増えることで、現場負担が大きくなることがあります。ハイスへ変更する場合は、工具寿命、再研磨の可否、交換頻度、在庫管理のしやすさまで含めて判断しましょう。
超硬とハイスの違いに関するよくある質問

超硬とハイスの違いに関するよくある質問に回答します。代替を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
Q1:超硬とハイスはどちらが長持ちしますか?
一般的には超硬のほうが耐摩耗性に優れ、長寿命になりやすいです。しかし、断続切削や振動の大きい条件では、超硬は欠けやすく、ハイスのほうが安定して使えることがあります。寿命は材質単体ではなく、加工条件との相性で決まります。
Q2:超硬からハイスへ切り替えると精度は下がりますか?
必ずしもそうではありません。しかし、高速・高精度を前提にしていた工程では、ハイス化によって回転数や送り条件を見直す必要があり、結果として精度や面品位に影響が出る可能性はあります。
Q3:まず何から工程を見直すべきですか?
いきなり全面的にハイスへ切り替えるのではなく、まずは「超硬でなければ成立しない工程」と「ハイス化の余地がある工程」を分けて考えるのがおすすめです。加えて、再研磨、再コーティング、工具形状の見直しも必要です。
超硬とハイスは加工条件に合わせて使い分ける
超硬とハイスは、どちらが一方的に優れている材質というわけではありません。超硬の価格上昇や納期の不安定化を理由にハイスへの切り替えを検討する場合も、すべての工程を一律で置き換えるのは適切ではありません。
工具選定では、工具単価だけでなく、加工時間、交換頻度、不良率、再製作のしやすさを含めた総コストで比較することが大切です。超硬とハイスの特性を理解し、工程ごとに適した材質を選ぶことで、加工品質の安定とコスト管理を両立しやすくなります。
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この記事の執筆者
特殊切削工具メーカー比較サイト編集部
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