切削工具のチッピングとは?欠けの原因と対策を解説

切削工具にチッピングが起きると加工精度が落ち、品質の低下を招きます。工具の破損にも繋がり、放置すれば生産コストも増加しかねません。製造現場ではチッピングの原因を把握し、適切に対策を講じることが求められます。

このコラムでは、切削工具のチッピングについて詳しく解説するとともに、原因と対策を紹介していきます。ぜひ最後までご覧いただき、チッピングによるトラブルを防いでください。

もくじ

  1. 【切削工具】チッピングとは
  2. 摩耗との違い
  3. チッピングの原因
  4. チッピングに起因するトラブル
  5. チッピングの対策
  6. 適切なチッピング対策をしよう

【切削工具】チッピングとは

切削工具のチッピングとは、使用中に刃先が欠けてしまう現象を指します。特に、硬度が高く靭性の低い超硬合金工具やセラミック工具などで発生しやすいです。

具体的には、加工中に生じる振動や衝撃、あるいは急激な熱変化などによって、刃の一部がわずかに割れたり剥がれたりします。細かい欠けは肉眼での確認が難しく、多くの場合、加工面の傷や粗さの変化として現れるのが特徴です。

チッピングが起きた工具でも使用することはできるものの、加工品質の低下や後続工程への悪影響が生じ、重大なトラブルに発展しかねません。

摩耗との違い

摩耗とは、切削工具が使用される中で徐々に削られていく現象のこと。切削抵抗や熱、摩擦の影響を受けながら時間をかけて進行する自然な劣化と言えます。使用とともに徐々に逃げ面が発生するのは正常な摩耗であり、均一的な摩耗は交換や再研磨の目安になります。

一方、チッピングは突発的に刃先の一部が欠ける現象です。摩耗はある程度の予測と管理がしやすいのに対し、チッピングは局所的なストレスによって急に発生するため、予防や早期発見が難しい傾向にあります。

チッピングの原因

切削工具のチッピングは、様々な要因が絡んで発生します。まずはチッピングの原因を確認しておきましょう。

加工内容に適していない

使用する工具が被削材や加工内容に適していない場合、チッピングの発生リスクが大きくなります。例えば、硬度が高い被削材に対して、靭性の低い工具を使用すると刃先が欠けてしまいやすいです。

工具の先端角や溝の形状が切削対象に合っていないと、局所的に応力が集中し、刃先に余計な負荷がかかってしまいます。被削材に対して刃数が多すぎる工具を使用することで切りくずの排出が悪化し、詰まりが刃先にダメージを与えるケースも考えられるでしょう。

送り量が大きい

切削加工で設定する送り量が不適切な場合も、チッピングを引き起こす原因になります。送り量が大きすぎると、刃が一度に大量の材料を除去しようとするため、刃先に極端な抵抗力が発生します。

これが繰り返されることで刃先に微細なクラック(亀裂)が入り、最終的にチッピングとして現れることが多いです。加工する素材が硬い、もしくは繊細な材料の場合は、なおさらその傾向が強くなります。

切削温度の急激な変化

切削加工中に発生する工具の急激な温度変化も、チッピングの原因の1つです。切削中の刃先は高速回転と摩擦によって高温になりますが、断続切削によって冷める・熱くなるを繰り返すと刃先に負荷がかかります。

こうした熱膨張と収縮の繰り返しは、特に熱伝導性が低いセラミックスや超硬工具にとって致命的です。温度変化によってコーティングが劣化して刃先の保護層が失われると、より欠けやすい状態になります。

チッピングに起因するトラブル

刃先にチッピングが発生すると、次のようなトラブルにつながります。

  • 仕上げ面が荒れる
  • 工具が折損する

切削工具にチッピングが生じると、素材を滑らかに切れなくなり、加工対象物の仕上げ面が荒れてしまいます。刃先の一部が欠けていることで、引き裂いたり削り潰したりしたような不規則な加工になるためです。

チッピングが進行すると、最終的には工具そのものの折損という重大なトラブルに発展しかねません。刃先が欠けている状態で加工を繰り返せば、内部の亀裂や微小な破壊が進行し、突然折れてしまいます。

このようなトラブルは加工中のワークを傷つけるだけでなく、工作機械にも損傷を与えるリスクがあります。生産ラインの停止や、工具交換による時間ロスといった重大な事態に繋がりかねません。

チッピングの対策

工具のチッピングは、原因に合わせて対策する必要があります。適切に対策し、コストパフォーマンスと作業効率を向上させましょう。

工作機械を調整する

チッピングを防ぐためには、使用する工作機械自体の調整と点検が欠かせません。特に主軸のブレや機械剛性の低下は加工中の微細な振動を生み、刃先のチッピングに繋がります。以下のような点を確認し、適切に調整しましょう。

  • 芯出しのズレ
  • 送り機構のガタや摩耗
  • クーラントの噴射精度のズレ

こうした不具合は目視で判断できないことも多く、定期的な機械点検や予防保全が重要です。スピンドルのバランス調整を行うと、工具にかかる負荷が均等になり、チッピングを抑えられます。

切削工具を調整する

新品の切削工具でも、取り付け角度や突出し長さが適切でなければ、刃先に余計な力がかかって欠けを誘発します。突出しが長すぎるとたわみが発生し、切削中の刃先がぶれて振動の原因になります。

切削工具は使用するにつれて摩耗や微細な欠けが進行していくため、刃先の状態をこまめに確認し、必要に応じて再研磨や交換を行うことが有効です。

工具を取り付ける際に精度の高いホルダーやチャックを使用すれば、回転ブレや振動が抑えられ、工具寿命の延長にも繋がります。

切削条件を変える

切削条件の見直しは、チッピング対策として最も効果的です。回転数や送り速度、切り込み量が被削材または工具に対して過大だと、想定以上の衝撃になり欠けが発生します。条件が過小でも刃先が滑って摩耗しやすいため、注意が必要です。

切削工具メーカーが推奨する値を基準に、被削材の硬さや粘り、加工形状を考慮して適切に調整しましょう。断続切削が避けられない場合には、工具にかかる衝撃を緩和する設定も有効です。

切りくずの付着を減らす

切削中に発生した切りくずが工具に付着すると、切りくずが取れる際に工具の一部を剥がしてしまうことがあります。特にアルミや銅合金など、粘り気のある材料は切りくずが溶着しやすく、欠けが発生する要因になります。

このような付着を抑えるには、まず切削油やクーラントの使用方法を見直すことが有効です。クーラントを適切な量・角度で噴射し、切りくずの排出性と刃先の冷却効果を高めましょう。

エアブローやミスト噴射を併用すれば工具に付着する切りくずをこまめに除去でき、刃先へのストレスを最小限に抑えられます。

切削工具を変える

加工内容や被削材に適した切削工具に変更することは、チッピングを抑える根本的な対策です。例えば、高硬度の材料を加工する際には、TiAlN、DLCなどのコーティング(TiAlN、DLCなど)を施した超硬工具を選ぶと効果的です。

近年では、被削材・加工目的別に特化した専用エンドミルやドリルも多く、現場の課題に応じた工具が選びやすくなっています。工具メーカーなどに相談することで、より適切なものが選べるでしょう。

ワークをしっかり固定する

ワークの固定が不十分なまま切削を行うと加工中に振動やズレが発生し、刃先への負荷となって欠けを引き起こします。特に小型のワークや薄板は固定しにくいため、注意が必要です。

クランプ位置が偏っていると、局所的な切削抵抗が発生してしまいます。こうした問題を防ぐには、専用治具の設計やクランプの均一化、場合によっては真空チャックなども検討すると良いでしょう。

適切なチッピング対策をしよう

切削工具は不適切な工具の選定や設定によって欠けやすくなります。チッピングを放置すると加工精度の低下、工具の破損といったトラブルを招くため、対策を講じる必要があります。

機械の調整や切削条件の設定を正しく行い、チッピングの発生を減らしていきましょう。必要に応じて、切削工具や治具を変更することも有効な対策です。

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この記事の執筆者

特殊切削工具メーカー比較サイト編集部

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