製造現場で生じる以下のような課題に対しては、特殊切削工具の導入、専門メーカーのサポートなどが有効な手段になります。
- 長期的な設備投資を削減したい
- 多品種生産への対応を可能にしたい
- 自動化・省人化に取り組みたい
特殊切削工具メーカーを選定する際には、いかに自社の課題解決に貢献できるか、信頼できる実績があるかなど、さまざまな点を考慮しなければなりません。
そこで今回は、高い専門性と技術力を持つ特殊切削工具メーカー「富士精工株式会社」の概要と、その強みについて解説していきます。
富士精工株式会社の基本情報・事業内容
愛知県に本社を置く富士精工株式会社は、1958年創業の歴史ある特殊切削工具メーカーです。自動車関連企業を中心に、超硬・ダイヤモンド工具をはじめとした切削工具、治具などの提供を行っています。
製造販売だけでなく、保守、環境装置、輸出入など幅広く多機能な体制で、市場に強い存在感を示しています。
【特殊切削工具】
- トラバースカット式バルブフィニッシャー
- プランジカット式バルブフィニッシャー
- GBツール(Guide-pad Boring Tool)
- 専用機ホーニングヘッド
- ATC式ホーニングヘッド
- 専用機ラインバー
- クレセントラインバー
- アンギュラユニット
- 歯取君
【その他】
- 治具・チャック
- 樹脂3Dプリント製品
- マテハン
「誠実」「高品質」「顧客第一」を理念に掲げ、顧客の困りごとをまとめてサポートする、という独自の強みを持った工具メーカーです。
富士精工株式会社の強み
富士精工株式会社の強みについて詳しく解説します。
C-maxブランド
「刃先と保持具の理想的結合(Clamp)の極限(max)」を追求するという富士精工の思いが込められたコンセプトとして、1969年に誕生した概念です。
進化し続けるビジネスコンセプトは、サーキュラーエコノミー(循環経済)の視点を取り入れ、次世代の持続可能な成長を目指します。
富士精工は、このコンセプトに基づき、加工点周りをトータルで設計・製作する業界屈指の特殊切削工具メーカーとして、国内外の産業を支えています。
自動化への取り組み
富士精工では、従来、職人の手作業で行っていた作業を自動化することにより、多品種少量ラインの自動化を実現しています。産業用ロボットやユニバーサルチャックの活用、PCD自働円筒機の導入などで可能になる、コストダウンと効率的な生産が強みです。
同社では、多品種少量生産を目指すため、以下の3つに基づいた「3Sライン」をコンセプトに掲げています。
- 工程の集約(S)
- 人・モノ・段取りを省略(S)
- 小規模(S)
自社製品として治具の開発も行っており、最新設備の導入によって、より切削ツールと親和性の高い治具の自動化に取り組んでいます。
製造・販売・サービスの融合
富士精工は、C‑maxブランドを冠する「ツールエンジニアリングカンパニー」として、製品開発から製造、販売、サービスまでをワンストップで提供しています。
工具ソムリエとして独自のラインナップを持ち、一発加工や振動解析診断など、現場の課題を解決する技術力が評価されています。
製造部門で得た知見を販売やサービスに即反映し、逆にサービスで得た課題を製造に活かすという好循環の仕組みが、C‑max独自のビジネスモデルの強みといえるでしょう。
SDGs活動への貢献
製品・サービスを通じて環境負荷軽減や持続可能性に取り組んでいる点も、富士精工の強みです。カーボンニュートラルに貢献する自動制御基板や、省エネクーラントなどの製造で環境に配慮しています。
工具の修理・改造・再研磨などにより廃棄を削減し、SDGsに貢献する「5R事業」への取り組みを積極的に実施している点も、注目すべきポイントです。
【5R事業】
- Repair(修理):破損した工具の原形復帰
- Recycle(再生):本来廃棄されるもの再生する
- Regrind(再研磨):使用済みになった切削工具の再研磨
- Reuse(転用・改造):別の目的への転用
- Reduce(省資源):廃棄材の減少によるCO2削減
国内外の拠点
富士精工は、国内外に幅広いネットワークを構築し、各地のユーザーの困りごとやニーズに寄り添っています。
- 本社/本社工場
- 工場(熊本、鹿児島)
- 営業所(北海道、関東、富士、大阪、北陸、九州)
- 海外拠点(韓国、中国、タイ、インドネシア、オーストラリア、インド、アメリカ、メキシコ、ポーランド)
これにより、日本全国への迅速な対応を可能にするとともに、各国の現場ニーズに応える体制が強化されています。多地域展開により、現地での受注からトラブル対応までをスピーディーかつワンストップで実現できるのが同社の強みです。
アフター&ビフォアサービス
富士精工は、ABS(アフター&ビフォアサービス)という概念に基づき、次のような幅広いサービスを提供しています。
- 振動解析診断
- 納品後のセットアップ
- テストカット
- 在庫管理
- CAE解析
- 3Dプリント造形サービス
これにより製造現場の課題を可視化し、適切な提案、ソリューションの提供を行えるのが大きな強みです。製造現場の「もっとこうしたい」を具現化するための、確かな技術力とノウハウが高く評価されています。
富士精工の特殊工具
ここでは、富士精工の特殊切削工具を一部紹介します。
ATC式 ホーニングヘッド
ATC(オートツールチェンジャー)装置対応のホーニングヘッドは、マシニングセンタに装着することで、汎用機でのホーニング加工を可能にします。ブロックのボア穴加工では、ボーリングとホーニングを一台でまかなえるため、複数設備の導入が不要です。
ヘッドの交換により、さまざまなワーク径に対応できるため、多品種・混流生産環境での段替え時間を大きく削減します。
トラバースカット式バルブフィニッシャー
C‑maxが培ってきた特殊工具の設計・製造技術により、高い精度が要求されるバルブシート面のトラバース加工を実現します。セットアップに手間がかかるツールに対し、クイックチェンジ仕様・ATC仕様の開発で、工具交換の時間短縮に貢献しています。
摺動部に採用した独自のスライダー機構により、切削摩耗を緩和し、工具寿命の向上を図ることが可能です。
GBツール(Guide-pad Boring Tool)
先行刃2枚と仕上げ刃1枚の構成を採用し、切削抵抗に最適化されたガイドパッドを内蔵しています。加工した穴を自らガイドする「セルフガイド設計」により、飛び穴の高精度加工が可能です。
これにより、専用機の導入が不要になり、投資削減のほか、汎用機での多品種対応も実現します。
アンギュラユニット
「高剛性・軽量・小型設計」を実現し、穴あけ、溝入れ、バリ取り、面加工など、多様な工程に単一ユニットで対応します。特に加工負荷の高い用途には、超剛性のプラスフットタイプで強化が可能です。
既設のマシニングセンタやタッピング設備などとの互換性があるため、専用治具の追加なしで導入でき、設備投資を抑えながらの高性能化を可能にします。
富士精工株式会社の企業情報
富士精工株式会社の企業情報は、以下の通りです。
会社名 | 富士精工株式会社(FUJI SEIKO LIMITED) |
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本社住所 | 〒473-8511 愛知県豊田市吉原町平子26番地 |
代表 | 森 誠 |
設立 | 1958年3月 |
従業員数 | 連結:1,215名 単体:406名(2025年2月現在) |
事業内容 | 超硬合金切削工具、ダイヤモンド工具、その他特殊切削工具、治具、金型の設計、開発、製造、販売 |
資本金 | 28億8,201万円 |
公式サイト | https://www.c-max.co.jp/ |
お問い合わせ | https://www.c-max.co.jp/contact/index.php |
富士精工は特殊工具メーカーの枠を超える
富士精工は、特殊切削工具の製造・開発だけでなく、販売と幅広いサービスを手がけるトータルエンジニアリングカンパニーです。「製造・サービス・販売」が1つになった独自のビジネスモデルは、特殊工具メーカーの枠を超え、世界の製造現場を支えています。
自社における課題の可視化、解決の糸口として、富士精工への依頼を検討してはいかがでしょうか。
この記事の執筆者
特殊切削工具メーカー比較サイト編集部
おすすめの特殊切削工具メーカーを厳選してまとめた比較サイトです。特殊切削工具に関する基礎知識からメーカーを選ぶ際のポイントなども紹介しています。一般切削工具では対応が難しい形状の加工や生産効率アップの実現のため、特殊切削工具の導入を必要とする製造現場の担当者様に役立つ情報をまとめましたので、ぜひチェックしてください。