切削加工の現場では、さまざまな専門用語が使われます。これらを知っていないと、業務で困ることがあるため、頻出の用語を押さえておくことが大切です。そこで今回は、切削加工でよく使われる用語の一部を紹介していきます。
切削(せっさく)加工でよく使われる用語
切削加工で主に使われる用語を紹介します。
切削条件に関連する用語

切削加工の精度や効率を左右する指標について解説します。
送り(送り速度/送り量)
送り速度は刃物が1分間に移動する量、送り量は工具が1回転で移動する量のことを言います。送りが大きければ加工時間は短くなりますが、仕上がりは粗く、刃先への負担も大きくなります。被削材の特性に応じて、最適な値を設定しなければなりません。
切込み
工具が工作物に入る深さを表し、主に旋盤加工やフライス加工で良好な切削を行うための指標の1つとして扱われます。切込み量が大きいと加工時間が短くなるものの、切削抵抗や熱によって負担が増加します。
切削速度
工具と工作物が相対的に移動する速度を指し、フライスや穴あけ加工では工具刃先の周速(m/min)で表されます。切削速度が高いほど能率は上がりますが、摩耗や熱の影響も増えるので、被削材や工具材質に応じた設定が欠かせません。
面粗さ
加工後の工作物表面に残る、微細な凹凸を示す指標です。面粗さは、製品の性能や組立精度、摩耗特性に大きく関わります。
切削抵抗
工具が工作物を削る際に発生する抵抗力です。抵抗が大きいと工具摩耗や加工精度の低下につながるため、切削条件の適正化、切れ刃形状の工夫が求められます。
靱性
材料が衝撃や変形に耐える性質(粘り強さ)を指します。切削工具の素材で見ると、超硬は硬度が高い反面靱性は低く、ハイスは硬度で劣るものの靱性が高いのが特徴です。
切削熱
切削中には、塑性変形と摩擦によって熱が発生します。熱による温度変化や変質で、ワークや工具に負荷がかかり、破損のきっかけになることも少なくありません。
加工方法に関する用語

切削加工と一口に言っても、その加工方法は様々です。今回は中でも代表的な加工をご紹介します。
乾式切削
切削油や冷却液を使用せずに行う加工方法で、メンテナンスの容易さやコスト削減、環境負荷の軽減を実現します。ただし、高温環境になりやすいので、工具材質やコーティングの性能が重要です。
湿式切削
切削油(クーラント)を用いて加工する方法です。冷却効果や潤滑効果、切りくずの排出性向上といった利点がある一方、環境負荷や処理コストが課題になります。
研削加工
砥石を用いて工作物を削る加工方法で、高い精度と優れた表面粗さを実現できます。仕上げ工程で用いられるほか、刃物での加工が難しい硬質材料にも対応できる点が強みです。
重切削
大きな切込みと送りで、一度に多量の材料を除去する加工方法です。能率が高い反面、切削抵抗や発生熱が大きいため、工作機械や工具に高い剛性と耐久性が求められます。
穴あけ加工
ドリルなどの工具を用いて、工作物に貫通穴や止まり穴を形成する加工方法です。穴径や真円度、位置の精度が重要で、深穴加工では専用のガンドリルやリーマによる仕上げが行われます。
工具・被削材の部位・種類に関する用語

加工する切削工具、そして加工される被削材に関連する用語をまとめました。
切れ刃
すくい面と逃げ面が交わる部分で、実際に工作物を削る刃部を指します。刃先の強度を確保するため、用途に応じてホーニング(面取りやR加工)を施す場合があります。
すくい面
切れ刃の上面にあたり、切りくずが流れる面を指します。すくい角の大小によって切削抵抗や切りくずの流れが変化し、加工面の品質や工具寿命に影響を与えます。
工作物
加工対象となる材料や部品を指し、被削材(ワーク)とも呼ばれます。切削加工では、鉄鋼、アルミ、銅、樹脂などさまざまな素材が含まれます。
仕上げ面
仕上げ加工後に得られる工作物の表面を指します。仕上げ面の良否は切削条件、工具材質、切れ刃の状態、切削油の有無などに影響されます。
シャンク
機械のチャックやホルダに固定する、切削工具の取り付け部分を指します。シャンク部がしっかり固定されていないと、振動や工具破損、品質の低下につながるため注意が必要です。
チップ
刃先交換式の工具の刃先の部分のことで、スローアウェイチップとも呼ばれます。専用のホルダに取り付け、旋盤やフライス盤、マシニングセンタでの加工に使用します。摩耗や欠損が生じたら交換するだけで済むため、経済的かつ効率的です。
ブレーカー
切削工具のすくい面に設けられた溝や突起で、切りくずを細かく分断しやすくする役割を持ちます。切りくずの形状や被削材に応じてさまざまなタイプが設計されており、切りくず処理を改善し、絡まりや機械の停止を防ぎます。
バイト
回転する被削材を削り取るための工具で、シャンクとチップで構成されています。用途に合わせて、チップが取り外せるタイプと、一体になっているタイプを使い分けるのが一般的です。
ソリッド工具
超硬合金や高速度鋼(ハイス)といった単一の素材から削り出して作られた工具です。剛性が高く、高い精度が求められる加工に適しています。
ロウ付工具
超硬チップなどの刃先材を鋼製のシャンクに取り付けて一体化させた工具です。比較的安価に特殊形状の刃先を作りやすいのが特徴です。
切りくず
切削加工で削り取られる材料の破片です。切削条件によって形状が変わるので、切りくずの状態から、適切な加工が行えているかを判断することが可能です。
バリ
バリは切削加工でワークに発生する意図しない突起物のことで、「かえり」や「かえし」とも呼ばれます。製品の外観や精度を損なうため、除去工程(バリ取り)が必要になります。発生を抑えるには、切削条件や工具設計の工夫が重要です。
取り代
加工の際に残しておく余分な材料を指します。荒加工では多めに取り代を残し、仕上げ加工で取り代を削り取り精度を出すことが一般的です。より高精度な仕上げ加工を行う為には、取り代を徐々に減らしていく必要があります。
切削油
切削中の潤滑・冷却・防錆を目的として用いられる液体です。水溶性と不水溶性があり、被削材や加工方法によって使い分けられます。
加工中のトラブルに関する用語

切削加工を継続的に行っていると、以下のようなトラブルが発生するケースも少なくありません。
き裂
切削時に発生する加工応力や熱の影響により、ワークの表面にき裂(クラック)が生じることがあります。切りくずの排出不良、不適切な加工条件もき裂の原因です。
凝着
切削中に、被削材の一部が工具表面に付着する現象です。ワークの材質や切りくずの排出不良などによって起きやすく、切れ刃や仕上げ面が荒れる原因になります。
欠損
切削工具の刃先が一部破損する現象を指し、欠けやチッピングとも呼ばれます。過大な切削抵抗や熱、衝撃の集中などが原因になりがちです。
摩耗
切削工具が使用中にワークとの摩擦、熱などによって、徐々に削られていく現象を指します。加工精度や工具寿命に直結するので、適切な材質の選定やコーティング、切削条件の管理が重要です。
切削工具とその性能に関する用語

切削工具や材質の種類を簡単にお伝えするとともに、工具の性能を左右する項目をまとめています。
切削工具
工作物から不要な部分を削り取るための道具全般を指し、用途に応じて使い分けます。
| ドリル | 穴あけ加工用の代表的な工具で、らせん状の溝を持ち、切りくずを排出しながら穴を形成する |
|---|---|
| タップ | ねじ穴を加工する工具で、ドリルで下穴を開けた後に使用する |
| リーマ | 穴の仕上げ加工に使う工具で、ドリルで開けた下穴を精密に仕上げ、寸法精度や真円度、表面粗さを向上させる |
| フライス | フライス盤やマシニングセンタで使われる工具で、側面加工や溝加工に対応している |
| バイト | 旋盤で使用する代表的な切削工具で、超硬チップをロウ付けしたものや、スローアウェイチップを取り付けるホルダ型がある |
工具材質
切削工具の代表的な材質としては、以下が挙げられます。それぞれ特徴が異なるため、用途に合わせて適した材質を選ぶ必要があります。
| ハイス | 比較的安価で汎用性が高いため、一般的に広く使われている |
|---|---|
| 超硬 | 硬度と耐摩耗性に優れ、高速切削や乾式加工に適している一方、強い衝撃には弱い |
| CBN | 熱伝導率が高く、硬度と耐熱性に優れている |
| セラミックス | 非常に硬い材質で耐熱性と耐摩耗性に優れているが、衝撃に弱く欠けやすい |
コーティング
工具の表面に硬質の膜を生成する技術です。代表的なものにTiNやTiAlNなどがあり、耐摩耗性・耐酸化性を高めて工具寿命を延ばします。
工具寿命
切削工具が使用に耐えられる期間を指し、摩耗の度合、仕上げ面の粗さ、寸法精度の低下、刃先の欠損などで判断します。工具寿命は生産性に直結するので、メンテナンスや交換時期の適正化が重要です。
工作機械に関する用語
切削工具を取り付ける工作機械としてよく聞かれるものをご紹介します。
旋盤
回転する工作物に工具を当て、切削する工作機械です。外径加工、端面削り、ねじ切り、穴あけなど多彩な加工が可能で、NC旋盤を用いることで高精度加工にも対応します。
マシニングセンタ
CNC制御による多機能な工作機械で、フライス加工や穴あけ、ねじ立てなどを自動で行います。工具交換装置を備えており、段取り替えの効率化や高精度加工に適しています。
【切削加工】必要な用語を押さえよう
切削加工では、工具や加工に関する専門用語がたくさん使われます。こうした用語を知識として押さえておくことで、スムーズに加工業務が行えるでしょう。
加えて、ワークと工具の適切な組み合わせや切削条件の設定を意識することで、効率的かつ精度の高い加工を実現できます。
最適な加工条件を整えるには、より深い専門知識と臨機応変な対応が不可欠です。製造現場で課題に直面したら、一度工具メーカーに相談してみることをおすすめします。
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この記事の執筆者
特殊切削工具メーカー比較サイト編集部
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